キウイ日記

キウイ日記

2020年3月2日月曜日

「主審人生はこれで終わった」っと思ったレフェリーが立ち直るまで


キウイでは、インターネットの記事をプログラムに用いることがあります。
先日は、下記の記事を紹介し、心の付き合い方や休職中の過ごし方について、みんなで話し合いました。
主審人生はこれで終わった……レフェリー山本雄大にはその後何が起きていたのか【サッカー、ときどきごはん】

今回は、この記事を通してスタッフがお伝えしたいことをご紹介します。

①失敗や嫌な出来事、ストレス場面をしっかりと振り返ること
この記事の山本さんの凄いところは、「主審人生はこれで終わった」とまで思ってしまった出来事を具体的に振り返り、それを他の人に伝えることができることです。
ここまで伝えることができるまでには、とても時間がかかったのだと思いますが……。
非常に辛いことや失敗をしてしまうと、その出来事を思い出したり、振り返ったりすることは、なかなかできません。
(山本さん自身、当該試合の映像を1試合通して見ることは、まだ怖くてできないようです)
それをしてしまうと、その辛いことを再体験しているように感じ、恥じてしまうからです。
ずばり、心理学では、このような時に感じる気持ちを「恥」と呼びます。
そのため、人はしばしばその出来事を忘れようとしたり、思い出さないようにしたりします。
しかし、出来事が辛ければ辛いほど、忘れられませんし、思い出してしまいます。
そのようにしていると、どんどん恥の気持ちは深刻になっていきます。
恥の気持ちが深刻なると、「社会人として失格だ」、「もうお先真っ暗だ」などのような破滅的な思考になってしまいます。
山本さんの場合は、「主審人生はこれで終わった」なのだと思います。
だからこそ、恥や辛い気持ちを和らげていくためには、その出来事を苦しくても吐き出していかなくてはなりません。
そのように考えると、辛かったこと、思い出したくないことを言葉にして伝えるという行為は、とても勇気がある行為なのだと思います。
弱音をはく、愚痴をこぼすことは、弱いとイメージされるかもしれません。
しかし、失敗を他者にさらしたり、無防備な自分を見せる行為だと考えると、とても力強いと言えます。

キウイでは、メンバーさんに休職原因の分析をしていただいています。

その分析は、簡単ではなく、なかなか負担がかかりますが、それでも原因と向き合っているメンバーさんはとても勇敢ですし、応援したい気持ちになります。

②1人ではなく、支援や助けを受けること
山本さんは、「ピッチ内外で多くの支援、助けがあったから復帰できた」と話しています。
実際に、記事を読んでみると周りの方が山本さんを気遣い、配慮し、寄り添っていることが印象的です。
「後半はすごかった」、「今まで見たことがないようなレフェリングだった」、「大丈夫か?」、「がんばってね」、「応援しているから」といいうように、皆さん山本さんに声をかけています。
決して、批判する声はありません。
これは、山本さん自身の「自分の主審人生はこれで終わった」、「もう一度この立場に戻ることはできないだろう」という心の声ととても対照的です。
①でも紹介した通り、恥の気持ちを和らげるためには、その気持ちや出来事を話す(隠さないようにする)ことが必要です。
しかし、その出来事は本人自身が「許せない」、「間違ってしまった」と思っていることです。
「失敗してしまった自分は、まわりからどう思われているだろう?」、「他の人が怖い」と思ってしまいます。
山本さん自身、”それで僕は……。外に出るの怖かったですね。街の中にはサッカーのことに興味がない方ももちろんいるんで、僕のことは知らないだろうとも思うんですけど、常に誰かに見られているとしか思えなくて……。正直家を出られなかったですね。2、3週間はなかなか寝られない、食べられないというのが続きました。”と話していますが、恥の気持ちが深刻であればあるほど、誰しもがこのような状況になります。
これは、休職された方にも多く見られます。
だからこそ、それを聞く周りの人たちは、本人を批判したり、判断したりせず、あたたかく受け入れることが必要です。

③「自分は1人じゃない」、「自分だけじゃない」っと思うこと
恥の気持ちを話すことで、最終的に、何が大切かというと、「自分は1人じゃない」、「自分だけじゃない」っと思える体験をすることです。
サッカーの審判の場合には、「PR(プロフェッショナル・レフェリー)キャンプ」というものがあり、山本さんは、そこで他の審判の方々の今までの失敗だったり経験してきたことを聞いたようです。
この体験は、山本さんが復帰する上において、とても大事だったのではないかと思います。
恥が深刻になると、「こんな失敗をしてしまったのは、自分だけだ」、「他の人達はうまくできているのに」っと考えてしまいます。
そうなると、とても苦しいです。
だからこそ、「自分だけじゃない」と思うことが重要です。
キウイでは、「セルフ・コンパッション」という自分との向き合い方をプログラムで行っています。
そのセルフ・コンパッションでは、「人間としての共通性」という重要なキーワードがあります。
「人間として共通性」と聞くと難しそうですが、つまりは「自分だけじゃない」と思うことです。
セルフ・コンパッションの観点からも恥との向き合い方は、重要です。

④復帰するためのプログラムを受けること
率直に、サッカーの審判にも復帰するためのプログラムがあることが、「そうなんだ」って思いました。
休職者の中には、復職支援プログラムを受けることに抵抗感を感じられる方がいます。
そのような方が、審判にも復帰プログラムがあると知ることで、その抵抗感が和らげばよいなって思います。
また、この山本さんのお話しは、一人の休職者の方が復職する様子のように感じてしまいます。

⑤豊かに感情を体験すること
この記事の中で、山本さんは、とても豊かに感情を表す言葉を使われています。
「驚いた」、「焦り」、「申し訳ない」、「怖い」、「落ち着いた」、「心配」、「感謝」、「ビックリ」、「はがゆい」、「モヤモヤ」、「辛い」、「ありがたい」など。
様々な感情を豊かに経験できることは、心の健康の上では大切です。
感情は、自分の状態を表すセンサーです。
豊かに感情を体験できることは、そのセンサーの感度が優れていることと言えます。
しかし、最近では、豊かに感情を体験し、表現できる人が少ない印象です。
だからこそ、キウイでは、様々なプログラムを通して、豊かに感情を体験してもらいたいと思っています。
そのため、この記事には感情を表すことがたくさんちりばめられていて、びっくりしてしまいました。

この記事からお伝えしたいことは、以上です。

最後に、記事でも触れられていますが、2020年のJ1リーグからVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)が導入されました。
VARは、ピッチ上の審判員とは別で、映像で試合を確認し、判定をサポートする審判員のことです。
そのVARが、今年の開幕戦である浦和-湘南戦から使用され、浦和はVARによってPKを与えてしまいました。
しかし、そのPKは外れ、浦和は劇的な勝利を収めました。
キウイでは、浦和レッズのファンが多いので、この試合の話題で盛り上がりました。
現在は、Jリーグは試合を中止していますが、再開後は、またキウイでサッカーの話が盛り上がるとよいなあっと思います。

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